2020.05.18
コロナウイルス感染症における性差①
当会の理事長 天野 惠子先生による投稿です。
2020年4月7日、内閣総理大臣から新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく「緊急事態宣言」が出された。それに先立つ4月2日、勤務先の静風荘病院へ行くため、ひばりヶ丘駅からバスに乗った。バスの中には男性15人、女性14人が乗っていたが、女性は全員マスクを着用しているのに対して、男性は5人がマスクなし。女性のほうが用心深い?
4月9日、菅官房長官が記者会見で、「国内で感染者全体に占める男性の割合はおよそ6割だが、亡くなった人に占める男性の割合は7割強と承知している」と述べた。性別による重症化や致死率の差については、患者個人の基礎疾患や年齢などほかの要因も絡むため、単純に性別が影響しているかはわからないとしていたが、非常に興味深い。
新型コロナウイルス感染症を巡っては、専門家の間では、性別により違いがあり、男性の感染率が高く、重症化したり、致命的な合併症を発症したりすることは既に指摘されている。
ニューヨーク市保健衛生局のウエブサイトによると、5月4日の時点で、同市内の新型コロナ感染者は17万534人。4万3045人の入院患者数と1万3536人の死者数もここに含まれている。感染者数は男性が10万人あたり2192人であったのに対し、女性が同1877人で、男女比は1.17、入院受療率は、男性が10万人当たり622.7人であったのに対して、女性は同408.6人で、男女比は1.52であった。
死亡数は男性が10万人当たり205.6人、女性は同120.3人で、男女比は1.71である。
英国ロンドン大学ユニバーシテイ・カレッジ・ロンドン(UCL)ジェンダー・アンド・グローバル・ヘルス・センターのサラ・ホークス所長らが創設した男女平等を推進している独立系団体「グローバル・ヘルス50/50」は、米国のCNNの協力により、世界中から新型コロナウイルスとジェンダーのデータを集めて解析している。
本日(5月4日)で、データにアクセスしてみると、70ケ国のデータが集められており、中国は2月28日のデータで、死者2,114名で男女比(%)は64:36。イタリアは4月23日のデータで、死者23,164名、男女比(%)は63:37。スペイン(4月28日)は、死者15,853名、男女比(%)は58:42。フランス(4月28日)は死者14,579名、男女比(%)は60:40。ドイツ(4月28日)は死者5,908名、男女比(%)は57:43。米国(4月28日)は、死者3,1586名、男女比(%)は57:43となっている。残念ながら日本(4月26日)のデータは死者372名とのみで、男女比は記載されていない。ほぼどの国でも男性の死者数が女性の死者数の約1.5倍である。
そこで、国内については国立感染研究所のホームページをのぞいてみた。5月1日付で
2020年2月1日に新型コロナウイルス感染症が指定感染症となった以降、第16週(2020年4月22日)までに感染症発生動向調査へ届け出られた10,590例(確定例9,438例、無症状病原体保有者760例、感染症死亡者に関の死体10例)に関する記載があり、症例の性別は、男性6,205例、女性4,383例、不明2例(男女比1.4:1)と報告されている。
コロナウイルス感染症については、感染率はほぼ同等であるのに対して、死亡率には明らかな性差があり、男性で死亡率が高い。次回は、男性で死亡率の高い要因について、検討してみたい。